もっとノーズ、プリーズ!~犬の嗅覚遊びとノーズワークシリーズその1
文と写真:藤田りか子
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フードをてんこ盛りにするよりも
今月から犬の嗅覚を活性化させるためのアイデアを皆さんとシェアしたいと思います。嗅覚という犬にとって大切な大切な器官、でもその大事さが我々ヒトにはどうもピンとこないため、見過ごされがちです。
愛犬の本当の幸せを願うのであれば、ぜひぜひ嗅覚を使った遊びを日常に取り入れましょう。
スウェーデンの我が家にはラブラドール・レトリーバーのアシカとカーリーコーテッド・レトリーバーのラッコという犬がいます。私はこの犬たちとノーズワークという嗅覚スポーツで競っています。
競うからにはそれなりのトレーニングも欠かせず、週に何回か練習をしています。犬たちに探させているものは、競技会でのターゲット臭となっているユーカリやローレルのアロマ芳香蒸留水(それもスポイトでたったの一滴)。
ただし、アシカとラッコのノーズ遊びは競技会に向けたトレーニングだけに限りません。実はいろいろな形で我が家では行われています。というのも、やはり彼らが一番自然な形で楽しんでくれるアクティビティだからなのですね。
まずよく行うのが、朝食の「ついばみ食い」です。ドライフードをバラバラと地面にばらまいて、それを一個一個食べてもらう。
まるで庭で鶏が地面にばらまかれた穀物をついばんでいるようです。しかし、鶏に比べるとやはり視覚が劣る犬は地面のドライフードを嗅覚で探さなければなりません。
フードボウルにてんこ盛りにしてそれをガツガツと一気に食べさせるよりも、においを探しながら一粒一粒食べてもらうほうが、犬にとっては「頭を使った〜!」という充実感があり精神的に満たされるのではないかと思います。これは人間にとっても同様でしょう。
与えられるよりも、自分でみつけてそれを探し当てる方が喜びの方が大きい。この「喜び」や「ワクワクする」とかいう感情の動き、は特に都会にすむ家庭犬はあまり経験していないように思えます。
犬の持つ採食行動の欲を満足させる
面白いことに、ラッコはフードボウルに盛られたドライフードというのはあまり見向きしないのですが、地面にばらまかれたドライフードなら食べようとします。
それもよだれをダラダラさせものすごい勢いで探そうとするのですね。もはやクンクンではなくフゴフゴという音を立てながらの鼻使いです。犬として本来持っている「採食行動」が発揮されたことで、ラッコの気持ちがすごくエキサイトしているのがわかります。
単に「食べる」ではなく「探して食べる」、すなわち「採食行動」の欲を満足させるというのは、動物にとってとても大事な部分です。これは動物のウェルフェアの基本的考えである「五つの自由」のうちの、「通常の行動様式を発現する自由」の一つでもあります。
地面にばらまいてフードを食べさせると「拾い食い」を助長しませんか、と日本でなぜかこの質問をよく受けます(スウェーデンではほとんど聞かないのですが)。
おそらく風潮として「拾い食いはだめ!」と世間の人が多く語るためでしょう。ただし私の経験に限りますが、ラッコとアシカがドライフードのついばみ食いをしたからといって、特に散歩中の拾い食いが激しくなったということはありません。
私の友人の犬たちも皆同じようなことをしていますが、やはり拾い食いで悩んでいる人はいないのですね。おそらく犬は「散歩の時」と「朝食の時」と状況を分けて考えているからでしょう。
犬は良くも悪くも状況によっていろいろなことを学習します。その点犬は決してお馬鹿さんではありません。
というわけであまり小さなことにクヨクヨしないように。それよりも犬の精神的なニーズを満足させることにもっと目を向けてみましょう!
「自分たちの限られた空間そして時間での中で、愛犬に何を与えられるか」を考えると、このお家で手軽にできるフードをばらまく嗅覚遊びというのは、素晴らしい「ウェルフェア」ではないかとも思うのです。
次回はどのようにフードばらまき遊びを行うのかその詳細をお話します。お楽しみに!
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