2018.10.02一緒に。もっと、

なぜ犬は遊ぶのでしょうか?

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今回は ガニング亜紀 さんの記事です。
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今、この文章を読んでくださっている皆さんにとって「犬が遊ぶ」というのは当たり前のことですよね。
子犬たちはもちろんのこと、成犬になっても、老犬になっても、体が動く限り犬たちは様々なやり方で遊びます。
でも、なぜ犬は遊ぶのでしょうか?なぜ遊ぶことが犬にとって必要なのでしょうか?
過去に複数の科学者が「犬と遊び」について研究をしていますが、今回は2017年にスコットランドのエディンバラ大学獣医学研究所のレベッカ・ソマーヴィル氏ら研究チームが発表した説をベースにお話ししたいと思います。

犬が遊ぶ3つの理由

子犬同士の遊び

犬が遊ぶ目的はただ単に「楽しいから」というだけではありません。犬が遊ぶ行動を観察していくと、いくつかの異なる目的があることがわかります。
なぜ犬にとって遊ぶことが大切で必要なことなのかという3つの理由を順にご紹介していきます。

1.運動能力を身につけるため

子犬同士が遊ぶ様子を見ていると良くわかるのですが、子犬たちはお互いを追いかけたり、取っ組み合いをして転げ回ったり、時には軽く噛み合ったりもします。
このような動きの中で彼らは身体的な運動能力を身につけていきます。これは犬以外の野生動物などでも同じで、遊びを通じて食料を得るためや戦いの際に自分を守る方法に関連するスキルを学んでいます。

2.予期しないことが起きたときのための訓練

遊びの目的の二つめは予想外のことが起きたときのための訓練です。
バランスを失った時に体制を整えるといった身体的なこと、びっくりするようなことが起こった時にパニックにならずに対処するといった精神的なこと、犬は遊びを通じて自然とこれらのことを訓練されていきます。
こうして学んだことは実際の生活の中のストレス要因とうまく付き合っていくための基礎となります。

3.社会的な関係を作るため

犬は人間と同じく社会的な生き物です。
遊びによって犬同士の社会的な関係を作り上げ、社会的なスキルも学んでいきます。
どのくらいの強さでなら遊び相手に噛みついても大丈夫か、相手の仕草を見て遊びを始める時と終える時のタイミングを知ることなどのスキルは遊びを通じて身につけます。
またおもちゃの引っ張り合いなどゲーム性のある遊びをして誰かが勝った場合も支配力を高めることにはつながりません。犬にとっての遊びとは社会的階級ではなくて協力関係を構築するためのものです。

遊びの経験が乏しいとどうなる?

上に挙げた遊びの3つの目的、どれもひとつだけでは犬の遊びという行動の一部の面しか説明ができません。遊ぶことは犬の心と体と社会関係全ての総合的な基礎になっているということですね。

身体的な面で言えば、幼い時期に他の子犬と遊んだ経験の乏しい犬は、筋力が弱く動きがぎこちない場合があります。
精神的には、予期せぬ出来事が必要以上に大きなストレスになってしまったり、極端な怖がりになる場合があります。
社会的な面では、経験が乏しいと他者との関わり方がわからずに攻撃的になったり、他の犬と全く関わることができないということもあります。
これらは犬対犬の関係だけでなく、犬と人間の関係性にも共通します。
犬同士の遊びの機会だけでなく、犬ができるだけたくさんの人間と積極的に遊ぶことも犬と人間がお互いに気持ちよく受け入れ合うために不可欠なことです。

犬の遊びと福祉の関係

遊びが犬の心と体と社会関係の基礎になるということは、遊びは犬の福祉に大きく関係しているということでもあります。
犬の福祉とは簡単に言えば、犬が心身および社会的な苦痛に晒されることなく犬らしく適正に生きることができるかどうかということです。人間基準ではなく、犬として幸せかどうか、ですね。
犬が遊びから学び身につけていくことは、犬が犬らしく幸せに生きるために不可欠なことです。

犬は人間と遊ぶことも大好きです。基本的に人間と遊ぶそのこと自体が犬にとってはご褒美なのですが、人間が犬の感じていることを理解していない場合は反対の結果になってしまうこともあります。
例えば、一見遊んでいるように見えるけれどコマンドと服従の繰り返しばかりの引っ張りっこなどは犬にとってストレスとフラストレーションにもなり得ます。
犬と人間が遊ぶと言っても、大前提として人間が犬という生き物をある程度理解していなくては犬の福祉につながりませんね。

遊びが犬の福祉に直結する一番わかりやすい例は、アニマルシェルターなど保護施設の犬たちです。
アメリカには保護施設の犬たちを遊ばせるための指導を行っている非営利団体があります。犬舎の中で食事と安全が保証されているだけでなく、遊ぶ時間を得ることで犬たちは心身ともに落ち着き、譲渡率のアップにつながっています。

おわりに

「犬はなぜ遊ぶのか?」というテーマに、エディンバラ大学の研究チームが答えた「犬の遊びの3つの目的〜運動能力の習得、予期せぬことに対処する訓練、社会的関係の構築」をご紹介しました。

また「遊びが認知の発達を助ける」「単独でおもちゃで遊ぶ行動は狩猟の代替行動」など、ここで紹介したのとは違う理由を挙げる研究者もいて、犬の遊びについてはさらに多くの研究が行われており、今後もまた楽しみです。

結局「なぜ犬は遊ぶのか?」と問われれば「犬が犬らしく幸せに生きるため」とも言えますね。
また私たちが心に留めておきたいことのひとつは、遊ぶという必要不可欠なことを出来ないままで家庭にやって来た犬たちもいるということです。
商業繁殖施設からペットショップに流通され兄弟犬と遊ぶ機会のなかった子犬、保護施設の犬舎の中で長期間暮らしていた犬などはその一例です。

犬の栄養やしつけなどは重視する人が多いのですが、遊びというと後回しにされがちです。
なぜ遊びが必要なのか、その目的はどんなことかを知ることで、犬の幸せのヒントになれば幸いです。

【参考URL】
https://www.appliedanimalbehaviour.com/article/S0168-1591(17)30257-5/fulltext

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ガニング 亜紀(ガニング アキ)

ガニング 亜紀(ガニング アキ)

南カリフォルニアにて、12歳のドーベルマンミックスと11歳のミニピンと暮らしています。2011年から6年間ブログメディアdog actuallyに執筆しておりました。 アメリカのユニークなペットフード事情や、犬の心と体のケアに関する情報の中から日本の犬たちにも役に立つものをお伝えしていきたいと思います。
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