自宅での耳掃除は耳介をやさしく拭くこと
耳の穴の外側あたり(穴の中ではありません)をやさしく拭き取っているところ
お家では耳介(外耳手前の目に見えているヒダ部分まで)をやさしく拭くだけでじゅうぶん。やわらかいガーゼやコットンに専用のイヤークリーナー(耳洗浄液)を染み込ませ、こすらないように優しく拭きましょう。洗浄液は愛犬用のイヤークリーナーを選びましょう。
スタッフコラム74話目
梅雨のジメジメした時期や蒸し暑い夏は体の匂いだけでなく耳垢・においが気になる季節。耳は脂質が出やすい場所なのでそれをエサとする雑菌も菌繁しやすいのです。放っておくと外耳炎など耳トラブルのもとになります。特にたれ耳のパートナー(愛 犬)は気になりますよね。
体をキレイに保つのと同じように耳も清潔を保ってあげたいものですが、家庭でできる耳掃除の範囲や正しい方法をご存じですか。
今回は愛犬の耳掃除の正しい方法から耳垢のチェック、耳トラブルに気をつけたい犬種、などたくさんの情報をまとめました。この記事の監修および耳掃除に関するよくある疑問(Q&A)の回答は経験豊かなグルーミングの専門家である井藤が行っていますので、ぜひ参考になさってくださいね。
犬の耳は、外耳、中耳、内耳、の3つの部分に分かれています。外耳から鼓膜につながる外耳道は、途中で奥の方へ折れ曲がりL字型をしています。覗き込んでも耳の奥は見えない構造になっていますので自宅で出来るケアの範囲は限られています。
耳の穴の外側あたり(穴の中ではありません)をやさしく拭き取っているところ
お家では耳介(外耳手前の目に見えているヒダ部分まで)をやさしく拭くだけでじゅうぶん。やわらかいガーゼやコットンに専用のイヤークリーナー(耳洗浄液)を染み込ませ、こすらないように優しく拭きましょう。洗浄液は愛犬用のイヤークリーナーを選びましょう。
自宅では1週間に1度(グルーミングサロンに通っていない愛犬の場合)が目安です。 特に問題がなければ2週間に一度チェックするだけでいいでしょう。そもそも愛犬の耳は自浄作用といって汚れがあれば外に出す働きをもっています。
ですが健康であっても耳は皮脂が出やすい場所。指先で触ってみると特に耳の穴に近い場所は少しだけ脂っぽいことがわかります。愛犬の耳の内側を嗅いでみるとうっすら匂いがありませんか。上の写真ように拭くだけでもすっきりします。
たとえば自宅でシャンプーしている場合は同じタイミングで耳掃除しておくといいですね。
強い匂いがあったり、濃い茶色や黒っぽい耳垢が出ていたり、頻繁に拭き取りが必要な状態では、なんらかの耳トラブルが起きていると考えます。そのような場合は、早めに動物病院で診てもらうことをおすすめします。
一昔前までの家庭での耳掃除といえば、液体イヤークリーナーを耳に注ぎ耳の根元を揉むことでした。この方法では耳道内にこびりついた汚れを取るのは難しく、かえって汚れを耳の奥に詰まらせてしまうことも。
特に慢性の炎症がある場合には鼓膜が破れてしまう可能性もありますので注意してください。
シャワーや水遊びなど、耳の中に水が入ってしまった場合は頭を振って水分を出すことができます。頭をじゅうぶんに振れない老犬や耳の中に汚れがある場合、水分が残ってしまいトラブルの原因になる可能性があります。耳トラブルの原因って?の項をご覧ください。
中にはコットンにお湯を染み込ませ掃除をするケースもあるようですが、耳の中に水が流れ込まないように注意してくださいね。やはり、耳掃除にはできるだけイヤークリーナーを使用することをおすすめします。イヤークリーナーは菌繁殖を防ぐことや乾きやすい成分を含むからです。
綿棒を使ってのお手入れは、耳垢を耳の奥まで押し込んでしまいます。外耳道に刺激を与え傷つる可能性があり、炎症がある場合には悪化させてしまう恐れがあります。
奥にある耳垢が気になる場合や外耳道に炎症が見られる場合、耳垢に異常がある場合には自宅ケアはせず、まずは獣医師に相談し、根本的な治療を行ってください。
耳の通気性をよくしたい場合には、プロのグルーマーに耳の中の毛を短くカットしてもらうだけにします。従来の耳毛抜きはパートナーに大変な苦痛を与えるだけでなく、耳道内に炎症や感染を引き起こす原因にも。基本的には、耳毛の処置は必要ありません。
ご紹介したのはあくまでもパートナーの耳に異常が無い場合です。耳のチェックで異常が見つかり、治療として耳毛の処置が必要な場合やイヤークリーナーでの耳洗浄などの自宅ケア方法を指示された場合には、必ず獣医師の指示に従ってくださいね。
濃い色の耳垢が穴のまわりについている状態
健康な状態の犬の耳はピンク色で、ほとんど耳垢も無く、嫌なにおいもありません。犬の耳垢は、通常は奥の方に溜まることなく外耳道まで自然に出ていく自浄作用があります。
通常の耳垢は薄い黄色っぽい色をしていて、においや粘つきもほとんどありません。耳垢は弱酸性で殺菌作用や皮膚を保護する役割があるので、頻繁に外耳道を掃除する必要はありません。
しかし、細菌の繁殖やアレルギー、異物の侵入などで外耳炎の症状が出ているときは、耳垢に特徴が出ます。外耳炎になると外耳が赤く腫れたりすることもあります。
パートナーの耳をチェックするときには、耳垢の色、耳垢の質感、臭いはもちろん、外耳に腫れているところはないかなども併せてチェックすることがポイントです。
耳ダニで多く見られる。
細菌の感染で多く見られる。
酵母(マラセチア)の感染で多く見られる。
脂漏症で多く見られる。
また頭や耳を触られることを嫌がったり、頻繁に頭を振ったり耳をかいたりする場合も、耳トラブルのサインです。耳トラブルはパートナーの日常の様子からわかることが多いので、日頃からパートナーを観察することを心がけてあげましょう。
また、パートナーの耳をチェックするときには、上に引っ張ると痛がることもあります。耳を後方に引き寄せるようにやさしくチェックしてあげましょう。
シャンプーや水遊びなどで耳の中に水が入ってしまった場合、犬は頭を振ることで外耳の水を外に出します。けれど、耳の奥まで水が入ってしまうと、水が抜けないまま耳が蒸れることで耳トラブルの原因となることがあります。シャンプーのときは特に、シャワーなどで耳の中に水が入らないように気をつけてあげましょう。
特に耳トラブルが起こりやすい犬種は共通して耳の中が蒸れやすい特徴があります。耳が垂れていたり、耳毛が多かったり、耳道が狭い犬たちです。 また皮脂分泌が多い犬(脂漏症傾向のある犬)は耳垢が多い傾向があります。蒸れたり、耳垢が溜まりやすかったりする犬の耳は、細菌やマラセチアなどの真菌が繁殖しやすくなり、外耳炎の原因となることがあります。
ゴールデンレトリバー、ラブラドールレトリバー、キャバリアなど
ミニチュア・シュナウザー、プードルなど
パグ、ブルドッグ、フレンチ・ブルドッグなどの短頭種
アメリカン・コッカー・スパニエル、シーズー、ウェスティなど
リストにない犬種でも、こまめに耳の状態をチェックすることが大切です。かゆみや炎症は大きなストレスですね。パートナーの様子に異変がないかいつも観察しておきましょう。
耳垢が出やすい、外耳炎になりやすい、その理由が食物アレルギーと診断された場合におすすめのフードブランドFORZA10(フォルツァディエチ)のシリーズからご紹介します。
FORZA10はイタリアの獣医師が多くの臨床事例を基に作った食事療法食です。食物アレルギーに配慮したシンプルな原材料と健康維持に有益な植物が持つ成分をプラスしたフードです。
ここでは耳ケア用と皮膚ケア用をご紹介します。大きな違いは耳ケア用の炭水化物源は米、皮膚ケア用はポテト(じゃがいも)です。まずは愛犬のアレルゲンを避けて選んでください。どちらもカユカユなどの症状に配慮している点では共通です。
獣医師から指定のフードを指導された場合にはそちらを優先して様子をみてくださいね。
自宅で上手に耳掃除をするためにはどんな手順がいいですか?
(1)まずはリラックスできる時間に。リラックスさせながらお顔周りや耳回りを優しくマッサージします。
(2)イヤークリーナー(耳洗浄液)をコットンに少し湿らせ指に巻き、指の届く範囲でやさしく拭きます。※耳掃除が苦手な場合は褒めながら掃除しましょう。小さく切ったおやつを与えながら行うのもおすすめです。
自宅での耳掃除におすすめの商品はありますか?
グルーミング室内ではシュアリンプウ イヤークリーナーを使用しています。容器の形状も使いやすく雑菌が繁殖できない環境を作ってくれるという点でも万能なので長年使用しています。
グルーミングサロンではどんなふうに耳掃除していますか?
(1)必要であれば無理せずできる範囲で耳毛カットを行います。
(2)イヤークリーナーを含ませたコットンを鉗子に巻き耳介や少しだけ穴の入口付近の中を拭います。
耳は敏感なところですね。特に敏感な愛犬には年齢や性格に応じて、まずは耳に触ることから始める場合もあります。
グルーミング中に異常に気づき、病院での診断をおすすめることはありますか?
頻繁にあります。耳の穴の入り口あたり(耳介)が腫れていたり黒い耳垢がひどかったり、頭をよく振っている場合は病院をおすすめします。
炎症や汚れがひどい場合はグルーミングでのケアだけでは改善が難しいため、獣医師による治療が必要なことをお伝えしています。耳垢の種類でわかる耳トラブルの項を参考になさってください。
飼い主に撫でられる犬
愛犬の耳掃除の正しい方法や耳トラブルの原因についてお伝えしました。梅雨時や夏の高温多湿で耳の中が蒸れることは、シャワーや水遊びでも気をつけたいですね。
健康な耳では基本的に目に見えるような耳垢はないものです。普段から耳の健康な状態を知っておくと耳のトラブルにも気づきやすいですね。毎日のコミュニケーションの中で耳のチェックをしてあげると、習慣づけられます。 こまめなチェックを心がけてあげましょう。
また愛犬に合ったより詳しい耳ケア方法を知りたいときには、犬の専門家(グルーマー)に相談してみませんか。正しい方法で愛犬の大切な耳を快適な状態にしてあげられますように。
ホリスティック・グルーミングの定義:人と犬がコミュニケーションを取り、信頼関係を築きながら長期的な視点で行うお手入れを指します。
(参考:ホリスティックケア・カウンセラー養成講座)
ご相談は無料
ごはんの窓口はこちらから監修
井藤 未奈子(いとう みなこ)
2008年からGREEN DOGの関西、関東の店舗でグルーマーとして勤務しています。大好きなパートナー(愛 犬)たちに囲まれて仕事をするグルーマーは天職だと思っています。
日々のグルーミングでは、パートナーにとって欠かせないケアについてオーナー様からお悩みやご相談をたくさん受けてきました。
少しでもオーナー様とパートナーのコミュニケーションの時間が楽しく、より良いものになるようなサポートをしていきたいと思います。
筆者
ペットフーディスト、 アドバンス・ホリスティックケア・カウンセラー、 ペット栄養管理士、 犬の食事療法インストラクター上級師範
山本 由能(やまもと ゆの)
現在の愛犬との生活がきっかけで犬の食事や心のケアについて勉強を始めたことがご縁となりGREEN DOG & CATへ。
自身も飼い主のひとりとして愛犬との生活を楽しみ介護も経験。
日々の業務では主に犬の栄養学や健康維持に関する情報を発信しています。