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身近なようで意外と知らない『肛門腺』のお話
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今回は犬の肛門腺の話です。肛門腺は犬の肛門の左右に1つずつあり、ここから分泌されるものが肛門嚢に溜まります。この分泌物、大型犬ではウンチの排泄時に一緒に押し出されますが、小型犬や中型犬では定期的に絞って空にしてやらないと、思わぬトラブルになります。
小さいけれど手のかかる存在の肛門腺、ちょっと心に留めておいてください。
※この記事はガニング亜紀さんが執筆された記事をGREEN DOG & CAT ライフナビ編集部が編集しお届けしています。
肛門腺の役割
実は私、毎日のようにうちの犬たちの肛門腺のことを考えています。さすがに四六時中そのことを考えているわけではないですが、散歩中など犬がウンチをする時、毎回必ず分泌液が飛び出したかどうかを確認しています。
肛門腺は犬の肛門の左右に1つずつあり、それぞれの腺から臭いのある液体が分泌されます。分泌物は肛門の脇、時計で表すと4時と8時の位置にある肛門嚢に溜まります。
分泌物はドロッとして脂っぽいものからサラッとした液体、ヨーグルトのようなクリーム状など、犬によって個体差が大きいものです。
スカンクが身を守るために発射するのは肛門腺の分泌液です。犬の場合はそこまでの機能はありませんが、恐怖を感じたり強く驚いたりした時に飛び出すことはあります。
また犬たちが挨拶の時にお尻を嗅ぎ合うのは、この肛門腺の分泌物の匂いを嗅いで様々な情報を読み取っています。肛門腺は犬にとってのコミュニケーションツールでもあります。
排便時や興奮時に自然に排出されることもありますが、詰まってしまうこともあるため、必要に応じてケアをしたほうがいいでしょう。
どのくらいの頻度で、どうやってケアする?
肛門嚢に溜まった分泌物は、大型犬ではウンチの排泄時に一緒に押し出されるので特にケアしなくても大丈夫なのですが、小型犬や中型犬では定期的に絞って空にしてやらなくてはいけません。
我が家の中型雑種のニコは、排泄時に押し出される時とそうでない時があるので先に書いたように毎日観察しています。もう1匹のミニチュアピンシャーは自力で押し出されたことは今まで一度もないので、家庭で定期的に絞っています。
肛門嚢がいっぱいになると、カーペットや草の上にお尻を擦りつけていわゆる「お尻歩き」をしたり、尻尾の付け根あたりを舐めたり噛んだりするようになるので、こんな仕草が見られたらケアをしなくてはなりません。
2011年の調査によると、肛門嚢が満杯になる期間は平均して3週間だそうですが、個体差はかなりあるので、日頃の観察が大切ですね。
ケアのために絞る方法は、お尻の外側から絞る方法と、肛門の内側から絞る方法があります。
自宅やグルーミングサロンで行う場合は外側から絞ります。
尻尾を持ち上げて、時計の4時と8時の位置を下から上に向かって押し出すように絞りますが、うまくいかなかったり自信がない場合はサロンや病院にお願いしましょう。
私が住んでいるアメリカでは、内側から絞る方法は獣医師または動物看護師の資格がある人しか行うことができません。直接肛門嚢に触れて処置をするので確実に空にすることができます。
我が家の中型雑種犬のニコは肛門嚢の口が堅いらしく、サロンでお願いしたら「この子は動物病院で内側から絞る方法でないと無理です」と言われたことがあります。
分泌液のテクスチャー、分泌液が溜まるスピードの他にこういう種類の個体差もあるんですね。
サロンでの肛門嚢絞りは、我が家のあたりでは10〜15ドルが相場です。動物病院での処置では20〜30ドルくらいです。
ニコはこの病院での処置が大嫌いなので、排泄時にできるだけ自力で押し出せるよう「そろそろかな?」という時期には、食餌に含まれるカルシウム(キッチンバサミで小さく切った骨や卵殻パウダー)を普段より少し多めにして便が固めになるようにします。同時にチアシードやサイリウム繊維も食餌に少し加えて、便のカサも増すようにしています。
これで、病院で絞ってもらう回数が月に1回だったのが2ヶ月に1回程度に減らすことができています。
また、私が食餌にプラスしているのと同じような内容で「お尻を絞る回数を少なくすることができる!」というサプリメントも市販されています。サプリメント大国アメリカらしいですね。
肛門腺に起こりやすいトラブル
肛門嚢がいっぱいなのに放置していると破裂してしまったり、細菌感染から肛門腺炎が起きることがありますので、定期的なケアはとても大切です。 地面にお尻を擦り付けた際に傷をつけてしまい、感染症になる場合もあります。そのような状態で治療をしないでいると、皮膚に穴が開いてしまう肛門周囲瘻孔(こうもんしゅういろうこう)という深刻な状態になることもありますので、軽く見ることはできません。
感染症などに比べるとずっと少ないですが、肛門周囲腺ガンという悪性の腫瘍が隠れている場合もあります。 犬がお尻を気にする仕草の他にも肛門の周辺に出血、赤み、腫れが見られたら、すぐに病院で診察を受けましょう。
肛門腺のトラブルは、起こる犬には何度も起こりやすい傾向があるそうです。また小型犬は肛門腺トラブルが多いと言われています。
ちょっと意外な関連ですが、皮膚にアレルギーの症状が出ている時には、肛門腺の周辺も腫れて分泌物が詰まりやすくなります。腫れのせいで絞っても空になりにくく、これらがトラブルの原因となります。 慢性的に肛門腺周辺のトラブルがある場合は、アレルギーの検査を受けてみることも一考の価値があります。
アレルギーの症状に投薬などの治療をした結果、肛門腺のトラブルが減ったり無くなったりする例もあるそうです。
まとめ
犬の体の中の小さな器官である肛門腺ですが、犬と暮らしているとその存在感に振り回されることも多いものです。
サロンでの定期的なトリミングが必要な犬種は、シャンプーやカットの際にセットでお尻のケアもしてもらうという場合が多いですね。
ところが大型犬の飼い主さんと会話をしながら「もうすぐお尻を絞ってもらいに動物病院に行かないと」と言うと「え?何それ?何のこと?」と、その存在さえ知らないという人も少なくありません。
普段のケアは必要なくても、思わぬトラブルが起こることはあり得ます。
犬にとってはコミュニケーションツール、人間にとっては小さいけれど手のかかる存在である肛門腺、ちょっと心に留めておいてくださいね。
※この記事はガニング亜紀さんが執筆された記事をGREEN DOG & CAT ライフナビ編集部が編集しお届けしています。