腸内細菌の主な役割
- 善玉菌
早食いは空気をたくさん飲み込みますし、食べ過ぎや腸の動きが遅い場合にも発酵がすすみガスが多く発生します。これらは口から(げっぷとして)出ることもありますが、多くは肛門から排出されます。 - 悪玉菌
ウェルシュ菌やブドウ球菌などのこと。タンパク質をエサにして腐敗物質(有害物質)を作ります。酸性を嫌い、アルカリ性の環境を好みます。 - 日和見菌
状況に応じて善玉菌にも悪玉菌にも変化する菌。
スタッフコラム68話目
みなさんは愛犬の腸活について意識されたことはありますか。
私たちヒトの腸内環境について近年の研究では、腸内細菌が1000種類、100兆個も生息していること、それらが栄養吸収や健康寿命と深く関係していることがわかっています。
愛犬にも「腸活」がおすすめなのは間違いありません。ヒトと犬では内臓の働きがとてもよく似ているからです。さらに体重当たりで比べると私たちよりも食事から摂るタンパク質量(肉や魚)が多い点からも気をつけたいことがあります。
今回はGREEN DOG & CATのペットフーディストが愛犬にできる腸活のための食事について詳しく説明します。腸活は愛犬のお悩みでも多い皮膚や腎臓のケアにも役立ちます。気になる方は是非読んでください。
愛犬の腸活とは、私たちと同様に腸内環境の健康維持のための活動(ケア)です。
腸内環境の健康とは、腸内細菌のバランスを保つこと。腸内にはさまざまな細菌がいてそれぞれの役割を持っています。大きく分けると善玉菌、悪玉菌、日和見菌という3つの種類になりますが、善、悪の文字を使ってますがどちらも体には必要な菌です。
そのため単に善玉菌が多ければ良いというわけではありません。
健康のためには善玉菌が元気で悪玉菌が増えすぎないようにすることが大事なのです。
腸は大きく分けると小腸と大腸があります。
腸が健康であれば、さまざまなメリットが得られることがわかってきています。
善玉菌が元気であれば、免疫細胞に働きかけて体に有害なものが体内に入ることを防げます。悪玉菌が増殖すると有害物質の産生が増え、それが血管に乗って全身に運ばれ内臓や皮膚に炎症を起こす原因になります。
皮膚や腎臓の健康のためには有害物質がたくさん作られないように食べ過ぎを防ぐのはもちろんのこと、悪玉菌が優勢にならないように善玉菌を元気にしておくことが役立ちます。
手早く免疫維持ケアを始めたい場合やウンチの状態が気になるときに役立ちます。
乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌そのものを摂ることです。これらは小腸から吸収され免疫細胞の元気維持に役立ちます。また乳酸菌は乳酸をビフィズス菌は乳酸と酢酸を作りだしますが、これらのおかげで腸内を悪玉菌が苦手な弱酸性のpHに保つことができます。
この働きは胃酸や胆汁によって死菌になっててしまっても、菌体そのものや乳酸菌が作りだした物質(バイオジェニックス)も同じような働きを持ちます。
乳酸菌、ビフィズス菌が豊富な食品
ヨーグルト、チーズ、発酵食品(納豆や麹)、グリーントライプなどのほかサプリメント
長期的に腸ケアを意識したい場合に役立ちます。
小腸では分解できないため大腸まで運ばれてから善玉菌のえさになり、腸のエネルギーとなる物質が作られます。
また腸内のpHを弱酸性に保つ短鎖脂肪酸が作られ悪玉菌が繁殖しにくい環境にします。
また短鎖脂肪酸にはさまざまな腸の健康のための働きが期待できます。詳しくは愛犬には特に食物繊維を意識したいわけにて説明します。
食物繊維が豊富な食品
野菜類、豆類、キノコ類、大麦や玄米のような繊維質豊富な穀類、バナナなど
発酵食品から摂るのもおすすめ
オリゴ糖が豊富な食品
豆類、アスパラガス、ブロッコリー、バナナ、ビーツ、甘酒などのほかサプリメント
※甘酒には米由来のオリゴ糖が含まれます。
関連商品
プロバイオティクスとプレバイオティクスを組み合わせて同時に摂ることをいいます。たとえば、ヨーグルトとバナナの組み合わせもシンバイオティクスですね。食事やサプリメントの組み合わせをいろいろ試してどれが合うか観察してみましょう。
従来の乳酸菌サプリメントでは変化が感じられない場合や腸そのものの健康が気になる場合、食事の工夫は難しい場合にも試してみてください。
乳酸菌の成分や生成物質から作られたもので腸内細菌を介さずに腸の健康維持に役立つ成分をいいます。
※βカロテンなどそのほかの食品成分で同じ働きが期待できるものを指す場合もあります。
関連商品
食物繊維は大腸まで運ばれてから善玉菌のエサになり、短鎖脂肪酸が作られます。この短鎖脂肪酸の働きを得られることが食物繊維を摂る最大のメリットです。
短鎖脂肪酸は酪酸、酢酸、プロピオン酸という有機酸のこと。
・腸内pHを弱酸性に保つ
・腸のエネルギーになる
・腸壁の修復に役立つ
・アレルギーの暴走を防ぐ
など、さまざまな良い働きがあります。できるだけ腸から有害物質が作られないようにすることは肝臓や腎臓をはじめ体全体の健康に結びついていきます。
腸にとってメリットの多い短鎖脂肪酸を作る材料が食物繊維です。
善玉菌(プロバイオティクス)を直接摂って免疫維持に役立てることも大事ですが、長期的な健康維持という面では日々の食事に自然食材からの食物繊維を意識して腸そのものを健康にしておくことがおすすめです。
食物繊維は肉や魚にはほとんど含まれず、野菜や果物、穀類などに多く含まれています。ただし消化しにくい成分のため大量に摂ると下痢・軟便の原因になります。特に食物繊維は便秘を招くこともありますので少量ずつ加えて様子をみましょう。
朝に家族が飲む野菜や果物のスムージーを少量分けて与えてみるのもいいですね。
ただし、犬には与えられない野菜や果物もあるためご注意ください。
野菜が好きな愛犬には細かく刻んだものや柔らかく煮たものを主食に足すのも良いですが、犬にとっても消化に負担が少ない発酵食品がおすすめです。犬用商品には少しずつ足すのに適したものがありますので毎日続けるのに便利です。
参考商品
手軽なトッピングにおすすめの商品です。
腸の働きが衰えてくるのはシニア期。若いうちは運動量も多く胃腸の働きも活発ですね。
ですが、しっかり腸活を意識していれば、免疫力や腸の働き自体を維持しやすくなります。足腰のために筋肉貯金をしておこう!と言われるように、腸内の健康も早いうちから始めることがおすすめなんです。
といっても、シニア期のケアのように消化しやすいものばかりを与えると、逆に胃腸を甘やかしてしまうことにもなります。
若いパートナーの腸活は食べ過ぎないことや、ストレスや偏食などで悪玉菌が優勢にならないことを第一に意識しておきましょう。
腸の健康のバロメーターとしてウンチを観察することでわかることがあります。悪玉菌が優勢の場合は真っ黒で匂いも強くなりますが、腸内環境を悪玉菌が嫌う弱酸性に保つようにするとウンチの色に黄色みが強くなり、匂いもやわらぎます。
硬さはバナナに例えられるように、柔らかすぎず、硬すぎず、トイレットペーパーでつまみやすく、トイレシートの上に汚れが残らないようなものが健康なウンチといえます。
消化物(食物)が腸内を移動するスピードによって変わるウンチの状態はブリストルスケールという参考指標があります。
4が理想のウンチです。3~1に上がるに従い、消化物が腸内を移動するスピードが遅く水分が吸収され過ぎて小さく硬いウンチになっていきます。
5~7に下がるに従い、消化物が腸内を速く移動しているため、水分が残り柔らかい状態です。
ウンチは動物性タンパク質が多ければ黒っぽい色(アルカリ性寄り)、野菜や穀物が多ければ黄色っぽい色(酸性寄り)になります。
色は食べ物に影響を受けます。たとえば運動量が多く肉が多い食事が体質にあっている場合もありますので、単に黒いウンチがいけないわけではありませんが、匂いがきつい、おならが多いなど、ほかにも気になることはないか観察してください。
黒くて匂いがきついと感じるなら、野菜や穀物を少量もしくは、おかゆをスプーン1杯ずつ足すのも良いでしょう。同時に水分摂取を増やせることもメリットです。
ひどい下痢や便秘は出来るだけ早く獣医師に診てもらった方が良いですし、軟便や便秘が続く場合も一度は獣医師に相談してみましょう。
愛犬の腸活、どれから始めれば良いのか迷った場合、手っ取り早く免疫力を意識したい場合は直接善玉菌(プロバイオティクス)やバイオジェニックスを、長期的に腸の健康維持を期待したい場合は、善玉菌のエサ(プレバイオティクスの中でも特に食物繊維)やシンバイオティクス(プロバイオティクスとプレバイオティクス)を意識すると良いでしょう。 犬用商品では粉末や液体もあるので、愛犬に与えやすいものから始めてみませんか。
どんなケアも過剰はいけませんので、スタート時は少しずつの変化(何かを足すときは少量ずつから)で様子をみましょう。
また、食事内容やストレスなど思い当たることがないのにウンチの状態が気になった場合は、病気の可能性もありますので早めに獣医師にご相談くださいね。
【参考】
ペット栄養管理学テキストブック
日腎会誌 27 腸内細菌叢が腎臓病に与える影響
厚生労働省 eヘルスネット 腸内細菌と健康
ご相談は無料
ごはんの窓口はこちらから筆者
ペットフーディスト、 アドバンス・ホリスティックケア・カウンセラー、 ペット栄養管理士、 犬の食事療法インストラクター上級師範
GREEN DOG & CAT ライフナビ編集部
犬と猫の基礎栄養学を学んだペットフーディスト等の資格を持つメンバーで構成されています。
パートナー(愛犬・愛猫)との暮らしを通して学んだことや感じたことを大切に、オーナー(飼い主)の目線に立ったコンテンツ制作を心がけています。
<編集部メンバーの取得資格> 編集部メンバーは、それぞれ得意分野に合わせて以下の資格を取得しています。
・ペットフーディスト
・ホリスティックケア・カウンセラー・ペット栄養管理士
・犬の食事療法インストラクター上級師範
・愛玩動物飼養管理士 など