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【獣医師監修】犬のホルモンのお話|ストレスとホルモンの関係について
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犬も人間と同様に、ホルモンが体を守り、維持するために重要な役割を果たしています。そして、ストレスとホルモンはさまざまな影響を及ぼします。今回は、犬のストレスの症状と発症メカニズム、そしてその対処方法について解説します。
春は、転勤や進学の季節であり、それに伴って引越しや家族構成の変化などが生じることがあります。犬は群れる習性があるため、仲間や大好きな人が居なくなったりすることに戸惑いやストレスを感じます。また、春先は三寒四温といわれるように寒暖の差が激しく、また花粉の飛散もピークを迎えます。感じ方や体質には個体差はありますが、春は犬にとって、多少なりともストレスがかかる季節なのではないでしょうか。
犬がストレスを受けたときの症状
犬がストレスを受けたとき、次のような症状や行動を示すことがあります。
<症状>
・元気がなくなる(セロトニンの減少が影響)
・食欲がなくなる(ストレスホルモンの影響で消化機能抑制)
・下痢をする(自律神経の乱れによる腸の過敏反応)
・便秘をする
・脱毛する
・免疫力が低下する(コルチゾールの分泌増加による免疫抑制)
<行動>
・自分の体を過剰に咬んだり、舐めたりする
・あくびをする
・身体を隠す
・孤立して過ごす
・他の動物や人へ攻撃的になる
・無駄吠えをする
・室内を荒らす
・不適切な場所での排泄する など
長期にわたる過度なストレスは免疫系の働きを抑えますので、さまざまな病気を起こりやすくもしてしまいます。突然にこのような症状がみられるようになった場合には、心当たりがないか考えてみましょう。また、これらの症状や行動は、ストレス以外の原因によっても起こり得ます。病気との鑑別診断が必要になりますので、かかりつけの動物病院にも相談してください。
ストレスとホルモンの関係
ストレスがかかることによって分泌されるホルモンをストレスホルモンと呼びます。コルチゾール、アドレナリン、ノルアドレナリンが代表的なホルモンです。ストレスホルモンは、身辺に危機が迫った時に、それを乗り越えるために分泌されるものです。
■コルチゾール
糖質コルチコイドの1種であり、腎臓のすぐ上にある副腎の皮質から分泌されます。コルチゾールを合成したものがステロイド剤という薬です。コルチゾールは平常時も分泌されており、糖代謝をはじめ、タンパク質や脂質代謝にも関与する生体にとって必須のホルモンです。
ストレスがかかるとその分泌量を増大させ、血糖値や血圧を上昇させます。血糖値を上げることで脳に栄養分となるブドウ糖を行き渡らせ、また血圧を上昇させることによって全身へ酸素を送り込み、危機的状況に備えます。
ただし、コルチゾールは免疫を抑制する作用もあるため、ストレスが長期に及ぶと免疫力を著しく下げ、感染症にかかりやすくしてしまいます。また、高血糖により糖尿病のリスクを高め、高血圧によって心臓病などの持病を悪化させる恐れがあります。
■アドレナリン、ノルアドレナリン
副腎髄質から分泌されるホルモンで、交感神経の興奮を引き起こし、心拍数や血圧を上昇させる役割を果たします。これにより危機的状況に即応できるようになります。これが『闘争あるいは逃走のホルモン』と呼ばれている理由です。
・アドレナリン
心臓は収縮力と心拍数を増やし、筋肉や臓器の血管を拡張させて運動器への酸素を増大させ、また血糖値も上昇させます。瞳孔を散大させるなど感覚器を研ぎ澄まさせ、痛みに対する感覚も麻痺させます。一方、消化器系の活動を抑え、エネルギーを他の重要な機能に集中させます。
・ノルアドレナリン
血管の収縮、心拍数の増加、消化機能の抑制などアドレナリンと似た働きがあります。アドレナリンより持続的であることのほかに脳内でのノルアドレナリンの分泌は、注意力や覚醒状態を高め、ストレスに対する反応を強化している点が特徴です。
アドレナリンとノルアドレナリンは、今まさに目の前にある命の危機に集中できる状態を全身の器官に引き起こします。しかし、長期にわたってこのような状態が続くと、交感神経と副交感神経のバランスが崩れ、リラックスできなくなり、結果として身体に変調をきたすことになります。特に副交感神経は、自律神経の一部を構成し、安静時やリラックス時に活発になる神経です。副交感神経の働きが低下すると、ストレスからの回復が遅れることになります。
■セロトニン、ドーパミン
・セロトニン
「安定・幸福ホルモン」とも呼ばれ、感情の安定に寄与します。ストレスによってセロトニンの分泌が減少すると、落ち着きがなくなったり、不安を感じやすくなったりします。
・ドーパミン
「快楽・やる気ホルモン」で、遊びや運動を通じて分泌され、犬のモチベーションを高める役割を持ちます。十分な刺激がないと、犬は退屈し、ストレスを感じることになります。
家庭でのストレスケア
犬は、いつもと同じことに安心感を覚えるものです。しかし、大好きな家族が進学や就職などで家を離れてしまったり、引越しをして家や環境が新しく変わったりすると、犬は不安やストレスを感じてしまいます。環境の変化に順応するまで、いつも以上に安心感を与え、ストレス軽減に努めてあげましょう。
■ホルモンバランスを整えるポイント
セロトニンを増やす(幸福ホルモン)
朝日を浴びる、規則正しい生活を送る。
ドーパミンを増やす(やる気ホルモン)
新しい遊びを取り入れる、適度な運動をする。
落ち着ける場所をつくる
自宅に、犬が安心できる安全な場所を用意しましょう。部屋の隅や壁際などの人の動線になりにくい場所がおすすめです。人の気配があるほうが落ち着くようであれば、リビングなどでもいいでしょう。
運動
人間と同様に、犬でも歩くことや遊ぶことは、緊張を和らげるのに役立ちます。運動をすることで、セロトニンやドーパミンの分泌が促進され、気分が安定しやすくなります。
オキシトシンを増やす(愛情ホルモン)
飼い主とのスキンシップ、見つめ合う時間を増やす。
オキシトシンとは脳でつくられるホルモンであり、ストレスの軽減をもたらします。相手への愛情や信頼関係と深い関係があり「愛情ホルモン」や「幸せホルモン」とも呼ばれています。2015年に科学誌Scienceに麻布大学の研究チームが、愛犬(パートナー)と飼い主が良く見つめ合うこととオキシトシンの分泌量について論文を発表しました。
この研究から分かるのは、愛犬と飼い主とが見つめあうことで何らかのコミュニケーションが増え、その結果としてオキシトシンの分泌が促進されるということ。つまり、信頼関係が築かれた愛犬と飼い主間のコミュニケーションを増やすことはストレスの軽減につながる、と考えられます。また、首や胸を優しくなでたり、マッサージなどを行なったりし、副交感神経を活性化させるのも良いでしょう。
ただし、その時々の愛犬の気持ちに配慮せず一方的にかまい過ぎることで、愛犬にとってはかえってストレスになってしまう場合もあるので注意したいものです。
まとめ
犬はなぜ、大好きな人が居なくなったのか、いつもの家に戻れないのか、お気に入りの公園に行けなくなったのかなど、人のように理解をすることができません。そのため、私たちが考えるよりも不安に思ったり、寂しかったり、落ち着かなかったりする度合いが強いのではないでしょうか。
春先の寒暖の差や花粉については、温度調整や病院への通院で比較的対処しやすいと思いますが、心のケアは一筋縄でいかないことも。ストレスホルモンの影響を理解し、オキシトシン・セロトニン・ドーパミンを意識したケアを行うことで、より効果的なストレス対策ができます。 環境の変化の影響で愛犬に元気がないと感じる時には、いつも以上に愛情を注いであげましょう。








