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【獣医師監修】換毛期における犬の抜け毛の原因と対策、お手入れ方法を徹底解説
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今回は獣医師が犬の換毛期の抜け毛の原因とその対策からお手入れ方法まで解説します。これから犬を飼うことを考えている人、いま犬の抜け毛で悩んでいる人はぜひ参考にしてみてください。
抜け毛のケアは必要?
現在、犬は非公認犬種を含めて世界に700種以上にのぼるといわれており、他の動物に比べて種類が豊かです。それは、ヒトが長い月日を費やして犬を選択的に交配させ、用途や目的に合わせて改良したためです。その結果、犬は野生動物とは異なり、ヒトが保護して食事を与え、手入れをしないと健やかな生活を送ることが難しい動物となってしまいました。
野生動物は季節に合わせて自然に被毛が生え変わりますが、犬はヒトの手によるケアが必要です。犬種によっては、脱落した被毛が絡み合って毛玉になってしまったり、毛が長く伸び続けたり、また逆に被毛がほとんどなかったりと、自然の摂理に逆らった毛質を獲得しています。したがって、ヒトの手で犬種に合わせて被毛を適宜ケアすることは必要不可欠と言えるでしょう。
抜け毛はいつおこるの?
犬の被毛には一次毛と二次毛があり、一次毛はオーバーコート(上毛)と呼ばれ、主に皮膚を保護する役割を担っています。二次毛はアンダーコート(下毛)と呼ばれ、保温と保湿の役割を担っています。
犬にはオーバーコートとアンダーコートの両方を持つダブルコートの犬種と、アンダーコートがないシングルコートの犬種がいます。ダブルコートの犬種は春と秋に大量の抜け毛(換毛期)がありアンダーコートが生え変わります。一方、シングルコートの犬は季節による換毛期はありません。
毛周期のサイクル(4期)
第1期:成長期:毛包の細胞が活発に分裂し毛が成長する
第2期:退行期:細胞の増殖が次第にゆっくりになってきます
第3期:休止期:毛包が活動を停止(休止期)
第4期:新生期:奥に再び新しい毛が生え始め、古い毛を押し出して脱毛が起こります
どんな犬の毛も上記の一定のサイクルで発育と脱毛を繰り返していますが、毛周期には犬種差や個体差があり、抜け毛の量にも違いがあります。
日々の抜け毛は長毛種が多いと思われがちですが、実は短毛種の方が日常的な抜け毛は多い傾向があります。たとえば、ダックスフントやチワワ、ラブラドール・レトリバーなどです。長毛種は毛が伸びる期間(成長期)が長く続くため抜け毛は比較的少なめなのですが、短毛種は毛周期が短く、短期間で毛が抜け変わるのです。
抜け毛シーズン(換毛期)に気をつけたいこと
犬の換毛期は春と秋です。古い毛が抜け落ちて、季節に合わせた新しい毛が生えてくる準備を始めます。特に春から初夏にかけて、ダブルコートの中毛種、長毛種では冬に密生したアンダーコートがごっそりと抜け落ちますので、素早く完全に取り去る必要があります。主な犬種として柴、コーギー、ポメラニアン、ゴールデン・レトリバー、ハスキー、ペキニーズなどが挙げられます。
抜け毛を放置すると毛に絡んで毛玉やフェルト状になり、抜け落ちずにいつまでも留まってしまいます。そうなると、皮膚が蒸れてしまい、皮膚トラブルにつながるのです。
毛玉や絡んだ被毛を完全に除去するのは素人ではなかなか難しく、家庭でのケアだけでは充分でないケースがあります。そのような場合には、家庭でのケアと並行して、プロにグルーミングを依頼するのが良いでしょう。
皮膚トラブルは犬では最も多く発生する病気の1つですが、治療は長期化しますので、未然に防ぐためには愛犬を毎日ブラッシングして清潔を保ち、日ごろから皮膚の状態を良く観察して病気を早期発見することが大切です。
抜け毛が多い・処理が大変な犬種ランキング(参考例)
1. 柴犬(換毛期の抜け毛が非常に多い、密なアンダーコート)
2. コーギー(短毛だがアンダーコートが密、部屋中に舞う)
3. ラブラドール・レトリバー(短毛で頻繁に抜ける)
4. シベリアン・ハスキー(季節ごとの大量の換毛)
5. ゴールデン・レトリバー(長毛+アンダーコートの組み合わせ)
6. ポメラニアン(毛玉になりやすく、ブラッシング必須)
7. 秋田犬(大型でダブルコート、抜け毛量が多い)
※このランキングは、ホリスティックケア・カウンセラーの視点から、ペット関連保険会社(アニコム損害保険株式会社)の犬種別人気ランキングや特性・疾患データなどをもとに作成しています。
美しい毛並みと毛質のための食事
美しい毛並みと毛質のためには、毛を生み出す皮膚の健康と十分な被毛の材料が揃っていることが大切です。消化吸収された栄養素は生命の維持に必要な臓器から優先的に行渡り、皮膚・被毛へは最後になりますので、常に充分な栄養素を補う必要があります。特に換毛期には毛の発育が活発になりますので、皮膚・被毛が必要とする栄養素を意識して与えると良いですね。
タンパク質やアミノ酸
皮膚の角質や被毛は、ケラチンと呼ばれるタンパク質から作られており、アミノ酸であるメチオニンとシステインが主成分です。犬と猫では、食事中のタンパク質の約30%を皮膚および被毛の健康維持のために消費するといわれています。そのため、充分なタンパク質とアミノ酸の補給が必要です。
かつお、鮭、いわし、牛肉、鶏肉、納豆などにメチオニンとシステインが豊富に含まれます。
ビタミンA
皮膚の新陳代謝に関わるビタミン。不足すると皮膚や被毛に潤いがなくなってきます。
レバー、牛乳、バター、チーズ、卵黄などに多く含まれます。
リノール酸
リノール酸は皮膚からの水分など喪失を防ぐバリアー機能に関連する脂肪酸。
菜種油や大豆油、コーン油などの植物性油に多く含まれます。
γリノレン酸
γリノレン酸は皮膚の保湿に関わっており、抗炎症作用をもちアトピー性皮膚炎の治療にも用いられています。ボラージオイル、ブラックカラントオイルに多く含まれます。
オメガ-3脂肪酸
皮膚からの水分喪失を防ぐバリアー機能に欠かせない脂肪酸であり、抗炎症作用も持っています。
魚油、クリル油、亜麻仁油、シソ油など
ビオチン
皮膚の乾燥やフケ、脱毛を抑える働きのあるビタミンB群です。
酵母、レバー、腎臓、鶏卵などに多く含まれます。
亜鉛
コラーゲンとケラチンの合成に重要な役割を果たし、皮膚と粘膜の健康維持にも欠かせないミネラルです。欠乏することによって、皮膚病変や被毛の成長の遅れがみられるなどの報告があります。
牡蠣、牛肉、レバー、鶏卵などに多く含まれます。
銅
メラニンの合成に必要なミネラルです。また欠乏することによって、被毛の色素の欠乏や被毛の色の変化、毛量の減少や光沢の消失、粗い毛などがみられます。
牛レバー、干しえび、大豆、ゴマなどに多く含まれます。
どの犬もトリミングは必要?
トリミングは、犬の抜け毛や毛玉を防ぎ、健康な皮膚を保つうえで大切です。被毛をカットして整えますが、定期的にトリミングが必要な犬種と必要のない犬種がいます。
定期的にトリミングが必要な犬種
・プードル
・ビション・フリーゼ
・ウエスト・ハイランド・ホワイトテリア
・シュナウザー
・イングリッシュ・コッカー・スパニエル
・アメリカン・コッカー・スパニエル
・シー・ズー
・マルチーズ
・ヨークシャー・テリア など
トリミングが必要な犬種でも必ずしなければいけないわけではありません。しかし、切らないと毛が伸びてぼさぼさになってしまい、見た目の美しさや清潔感が失われ周囲に不快感を与えてしまうことさえあります。また美容のために行うと思われがちですが、毛を衛生に保つ、怪我の防止、ノミやダニなどの寄生を予防するなどの目的もあります。
定期的なトリミングの必要がない犬種でも、部分カットは適宜必要です。お尻周りの毛を短くすることにより、うんちが毛につきにくくなります。また、足裏の毛は伸びやすいので定期的に短くカットすることによって、フローリングで滑ることを防ぐことにつながります。
抜け毛対策と被毛の長さの関係
犬をパートナーとして家庭に迎え入れる際、選ぶポイントはいくつもありますが、その中の1つに被毛の扱いやすさがあります。
短毛種
短毛種は毛が伸びても2~3cmほどですので、定期的なトリミングは必要ありません。そのため、被毛に対する費用や手間があまりかからない種類といえます。ただ、短毛種は毛が抜けやすいため、飼い主の服やソファー、カーペットなどの抜け毛対策は必須です。粘着ローラーをはじめ、色々な抜け毛対策グッズを活用したり、また服を着せたりすることで抜け毛の飛び散りは軽減できるでしょう。
中毛種
シングルコートの犬もいますが、多くはアンダーコート(下毛)があり、抜け毛が多いのが特徴です。定期的なトリミングは必要ないため日々の手入れは比較的簡単だと思われがちですが、こまめなブラッシングは欠かせません。また換毛期にはごっそり被毛が抜け落ちます。
長毛種
放っておくと、どんどん毛が伸びていきます。抜け毛はそれほどありません。長い毛が絡んだり毛玉ができたりしますので、毎日のブラッシングと定期的なトリミングが必要です。トリミングには費用がかかりますので、経済的な余裕も必要です。
まとめ
犬の抜け毛には犬種や季節、健康状態などさまざまな原因があります。日々のブラッシングや食事管理、定期的なケアによって、健康な被毛を維持し、抜け毛トラブル(過剰な抜け毛や炎症などの二次トラブル)を防ぐことができます。愛犬の抜け毛にお悩みの方は、ぜひ生活習慣やケアの見直しを取り入れてみてください。
ケアをすることで清潔さを保つだけでなく、柔らかなヒトの手は愛犬に安らぎを与えますし、コミュニケーションの手段ともなり、病気の早期発見にもつながります。犬の被毛のスタイルはバラエティ豊かでとても愛らしいものですが、愛犬を選ぶときは、可愛い、好み、ということだけでなく、被毛ケアに手間や費用をどのくらいかけられるのかなど、現実的なことを想像することも大切です。







