2020.03.19食事・ドッグフード

考古学が明らかにする古代の犬の食事から、現代の愛犬のごはんを考える

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伏せをするウルフ犬
愛犬のごはん、毎日与えながらもいろいろと悩みが尽きないという方は多いのではないでしょうか。
フード派なら「どのブランド?」「原材料は何がいい?」「メーカーによって言うことが違う!」などと悩ましいですし、手作り派なら「生?加熱?どちらがいいの」「野菜や穀物は犬には不要?」「骨は与えても大丈夫?」と、こちらも疑問がどんどん出てきます。

よく耳にするのは「犬の先祖であるオオカミが食べているものを基準に考えよう」という言葉ですが、むしろ現代の犬の本当の先祖である家畜化されてからの犬たちが食べていたものの方が参考になるのではないでしょうか?
犬の家畜化の起源には1万5千〜4万年前と諸説ありますが、犬は最低でも1万年以上に渡って人間が与える食事を食べてきたわけです。
幸いなことに犬の家畜化の初期の頃に彼らが何を食べていたのかが、考古学や人類科学によって明らかになりつつあります。
そうして見えて来るのは、犬とオオカミの食生活が違う道を辿り始めたのは想像以上に遠い昔なのだということです。

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2万8千5百年前の犬たちが食べていたもの

ウルフ犬横顔
アメリカ、チェコ、ベルギーの研究者が共同で発表した2020年の研究では2万8千5百年前の遺跡から発見された2種類のイヌ科動物の歯が分析されています。
チェコのプレドモスティ遺跡から発見されたイヌ科の哺乳類は、現代の犬に近いタイプとオオカミに近いタイプの2つの異なる種類がありました。
研究者はこの犬タイプの方をプロトドッグ(原始の犬)と呼び、プロトドッグとオオカミタイプそれぞれの歯の傷や摩耗の具合を比較しました。
プロトドッグの歯には大きな傷や摩耗が見られ、硬くて脆い食べ物を摂っていたことを示していました。オオカミタイプの歯の傷はもっと小さくて摩耗も少なく、マンモスの肉を多く食べていたことを示していました。
プロトドッグの歯の傷からは、彼らが人間の居住地域で骨などの人間の残り物を食べていた可能性が高いことが伺えます。2種類のイヌ科動物はこの時すでに異なる食事を摂っていたことが裏付けられます。
研究者はこの犬の歯の状態から犬の家畜化のプロセスをさらに探っていくとのことですが、オオカミと犬は2万8千年以上前から違うものを食べていたという事から、愛犬のごはんは必ずしもオオカミを基準にしなくてもいいのではないか?という点が気になってきます。

古代の犬は植物性の食事も摂っていた?

穀物スティックを見上げる犬
次に、古代の犬は穀類や豆類など植物性の食べ物は摂っていたのでしょうか?
犬が植物性のものを食べるようになったのは人間が農耕を始めた後からだと考えられますが、2019年にスペインの考古学と人類科学の研究者が4千〜5千年前の人間と犬の食事内容を明らかにしています。
墓地の遺跡から発掘された人間や犬たちがどんなものを食べていたのかを調査するため骨の炭素や窒素の値が測定されました。
その結果、犬たちが食べていたのは大麦、小麦、豆類、肉類、家畜の乳類であることがわかりました。
少し意外ですが、現代のドッグフードの原材料と良く似ていますね。この頃のこの地域の犬の食事は穀類をメインに人間の残り物の肉や骨、乳製品が与えられていたと研究者が結論づけています。研究対象の遺跡から見つかった犬たちは人間と一緒に埋葬されており、大切に扱われていたことが伺えるそうです。

このスペインの研究に先駆けて、2013年にスウェーデンの生化学の研究者が「現代の犬の初期の祖先は肉食中心のオオカミよりも炭水化物の豊富な食事に適応するため、デンプン分解酵素の膵アミラーゼを多く分泌する遺伝子を持つようになった」
2016年にフランスの古代生物学の研究者が「古代ヨーロッパの犬は炭水化物を消化するための遺伝子コピー数がオオカミよりも増加しており、それは約7千年前から始まっていた」と発表しています。どちらも古代スペインの犬が食べていたものを裏付けるように一致しています。

では「正しい犬の食事」って何だろう?

大きな骨にかぶりつく犬
では犬の食事を肉中心にすることは間違いで、穀類や豆類をメインにしても良いということでしょうか?いえ、決してそういうわけではありません。
当たり前ですが、古代の人々は犬の栄養学の知識は持っておらず、犬の寿命は現代よりもずっと短いものだったはずです。
昔からずっと食べていたものが必ずしも全て正しいわけではありませんが、生き物の体は長い間食べてきたものに対して順応するというのは心に留めておきたい大切な点です。
炭水化物を消化するための遺伝子コピー数も、オオカミよりは多いですが犬種によってかなりのばらつきがあるそうです。

少し整理してみましょう。
犬は2万年以上前からオオカミとは異なる食性を持ち始め、オオカミよりもずっと雑食寄りになってきました。
約7千年前から炭水化物を消化するための遺伝子コピーが増え始め、犬は穀類の多い食事にも対応できるよう進化してきました。
現代の犬よりもずっと大きい犬歯を持っていたと思われる古代の犬でさえ、硬い骨を噛むことで歯に傷がついたり摩耗したりしていたということは、大き過ぎる骨を与えることは避けた方が良さそうです。古代のオオカミですら硬く大き過ぎる骨は食べていません。

犬の食事を動物性のタンパク質を中心にすることは理に適っていますが、適量の穀類や豆類を使うことが犬の体に合わないとか間違っているとは言えません。
「オオカミに最も近い生の肉を与えるのが一番!」とか「穀類が入っているフードは犬の負担になる」と一概に決めつけることなく、それぞれの犬と向き合って目の前にいる犬にとっての最適な食事の内容を決めることが大切です。

つまり「正しい犬の食事」は犬の数だけあるとも言えます。
食事のことだけでなく、トレーニングでも医療の面でも多くの専門家は「犬は一匹一匹みな違う」とよく言われます。
犬と暮らすことの難しい面でもあり、楽しい面でもありますね。

おわりに

古代の犬が食べていたものについての研究のご紹介と共に、愛犬の食事について改めて考えてみました。
数万年前や数千年前の食べ物という、目の前にいる愛犬とはかけ離れて見える研究が、フードや手作りごはんの食材を選ぶ時の知識の一片になることもあるかもしれません。
そして何より、今私たちの側にいてくれる犬たちへと繋がってきた長い歴史に対してワクワクするような気持ちになりますね。

《参考URL》
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0305440320300169?via%3Dihub
https://link.springer.com/article/10.1007/s12520-019-00781-z
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28018628

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ガニング 亜紀(ガニング アキ)

ガニング 亜紀(ガニング アキ)

南カリフォルニアにて、12歳のドーベルマンミックスと11歳のミニピンと暮らしています。2011年から6年間ブログメディアdog actuallyに執筆しておりました。 アメリカのユニークなペットフード事情や、犬の心と体のケアに関する情報の中から日本の犬たちにも役に立つものをお伝えしていきたいと思います。