2021.07.19一緒に。もっと、

世界の科学者が注目する犬のエイジング研究

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世界の科学者が注目する犬のエイジング研究

犬が人間よりもずっと早いスピードで歳を取ることは多くの人がご存知の通りです。この「犬のエイジング(老化)」という課題には世界の多くの科学者が注目しており、いくつもの大規模プロジェクトによる研究が進められています。
なぜ犬のエイジングの研究が数多く行われているのでしょうか?犬といっしょに暮らしている私たちも知っておいた方が良いのでしょうか?

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犬のエイジング研究は人間の老化への理解を深めることにもつながる?

世界の科学者が注目する犬のエイジング研究
犬であれ人間であれ、生きているものは全て歳をとっていきます。エイジングの研究は老化を遅れさせるとか防止するというものではなく、いかに健康的に歳を重ねて行くかの追求が主要な目標です。老化に影響を与える生物学的な要因や環境要因をより深く理解し、老化によって生じる病気の予防や治療方法を探っていきます。

ではなぜ犬が研究の対象になるのか?それは人間の老化を研究する際に、犬は理想的なモデルとなるからです。
人間のエイジングを研究するために特定の個人の老化を追って行くことはたいへんな時間がかかります。犬は人間よりも老化のスピードが早く、なおかつ老化のプロセスが人間と良く似ています。人間と生活環境を共有しており、遺伝的な多様性もあります。
犬の老化を研究することで人間の老化プロセスへの理解を深め、ガンや糖尿病、認知機能障害などの治療の研究にもつなげていこうという狙いです。

犬の認知機能の老化はチワワもグレートデーンも同じ速度で進む

世界の科学者が注目する犬のエイジング研究

犬の老化の中でも特に高い関心が寄せられるものの1つは脳の老化=認知機能や行動の変化です。

イギリス最大の犬保護団体ドッグズトラストのリサーチ部門の研究によると、犬の認知の老化は身体面での老化と違って、犬種やサイズに関わらずほぼ同じ速度で進むと結論づけられています。
認知機能の年齢で言えば、7〜9歳はシニア前期、10〜11歳をシニア後期、12〜14歳を高齢期、15歳以上を超高齢期と見なすとしています。この区分はチワワもグレートデーンも同じです。シニア後期以降の年齢に達するグレートデーンはほとんどいないのですが、認知機能に関して言えば8歳のグレートデーンを高齢期とはしません。たとえ平均寿命が9歳の犬種でも8歳の認知機能はシニア前期に当たります。
愛犬の認知機能年齢がどのあたりの段階にあるのかを知っておくことは、シニア期以降の犬と暮らす人にとって大切な目安になることと思います。

またハンガリーのエトヴェシュ・ロラーンド大学の動物行動学の研究チームは一般の家庭犬の参加を募って『シニアファミリードッグプロジェクト』という研究を行っています。その過程で高齢の犬は若い犬よりも脳と筋肉に特定のRNA分子が多くなっていることを発見しました。現在、血液中にもそのRNA分子が増えることが確認されたことから、血液検査によって脳の老化度を測定することができるかどうか研究が進められているそうです。

研究に参加することで家庭犬とその飼い主が得られるものって?

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アメリカのワシントン大学とテキサスA&M大学が共同で実施している『ドッグエイジングプロジェクト』のスケールはさらに大きいものです。
アメリカ全土から約3万頭の家庭犬の飼い主が定期的に質問票に回答したり、身体サンプルを送るなどの方法でプロジェクトに参加しています。家族に迎えたばかりの子犬の参加も多く、研究チームは犬の生涯データを子犬期から継続して収集しています。
犬のエイジングを総合的に調査していくことで、病気の予防や治療研究、一般の飼い主への教育や情報提供を行っています。

このプロジェクトのように一般の家庭犬の参加を募集する研究機関は少なくありません。研究用に飼育されている犬と違って、より現実の生活に近いデータが取れること、大量のデータを収集できることから注目されています。
質問に回答することで愛犬を観察する機会が増えて理解が深くなった、愛犬に負担をかけずに社会貢献ができる、など参加者にも好評の様子です。
日本では家庭犬の参加を募る研究はまだそれほど多くありませんが、獣医大学のSNSなどで募集が告知されることがあります。興味のある方はこまめにチェックしてみてはいかがでしょうか。

おわりに

世界の科学者が注目する犬のエイジング研究
犬のエイジングに関する研究が注目され、数多くのプロジェクトが進行中だという話題をご紹介しました。
犬は人間と同じ環境で生活を共にし、人間とよく似たプロセスを経て歳をとっていくため、人間の老化や病気の研究の助けにもなるとは「犬は人類の最良の友」という言葉をそのまま表しているようです。

愛犬が年を重ねていくことは時に切ないこともありますが、時間と愛情と信頼で出来上がった宝物でもあります。科学に基づく知識という頼もしいツールが加わることで、健やかに老いる犬が増えていくことに期待します。

《参考URL》
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2021.643085/full
https://link.springer.com/article/10.1007/s11357-021-00373-7
https://dogagingproject.org

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ガニング 亜紀(ガニング アキ)

米国カリフォルニア州在住。2005年から犬との暮らしをスタートして2匹の犬をそれぞれ15歳で見送りました。犬たちとの16年間で知識が増えると犬との暮らしが楽になることを痛感しました。自分が「へ〜!」と感じたことを堅苦しくなくお伝えしていきたいと思っています。