2018.06.15一緒に。もっと、

【犬種シリーズ】柴~海外の柴事情

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【犬種シリーズ】柴~海外の柴事情

文と写真 藤田りか子
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作業犬として見なされている柴

最近、海外において柴は決してレア犬ではなくなっています。特に私が住むスウェーデンなど北欧では日本犬種の中で今や秋田を抜いて人気。私の田舎の地元ですら、たまに柴の散歩連れをみかけるものです。

日本人にとって柴とは我々の心のふるさと、懐かしさをもたらしてくれる犬種ですが、海外で柴はどのように見られているのでしょうか?

意外ですが、作業犬として高く評価をされているのですね。日本人からすると、柴は番犬であり愛玩犬。作業犬にするという発想自体がまるでありませんでした。よってスウェーデンに住むようになって、服従競技の上級クラスでシェパードやゴールデンと一緒になって競っている「柴」を見た時、びっくりしたものです。

そればかりではありません。アメリカで柴が介助犬として使われている話も聞いたことがあります。その犬はたった2ヶ月で訓練をクリアしたとのこと。何故柴を介助犬としてトレーニングしたのか、理由を聞くと
「とても賢い、落ち着いている、小回りが利くからいい、軽く、障害者でも楽に膝に上げられる」

敢えて柴を災害や雪崩救助犬として訓練している人にも会いました。
「小さくて機動性があります。ラブラドールの行けない所も入っていける、冷静で判断力に優れています」

だからサーチ犬に向いているのだそうです。

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「柴が作業犬だなんて、きっと西洋に渡ってレトリーバーのような性格に変えられてしまったのでは?」
なんて思う人もいるでしょう。そんなものなのでしょうか。

スウェーデンの柴愛好家に聞けば、確かに本犬種が自立心に富み、シェパードのような従順さを持たない、とは認めています。しかし野性味を伴った「犬らしい賢さ」にも注目をしています。それをなんとか活用できないものか、そんなところから柴を作業犬として、という考えに至ったのかもしれません。もっとも私達みたいに「柴=番犬」という固定観念がなかった分、発想も自由だったのでしょう。

柴気質を理解しようとする

「本当の柴気質とは?」

は、こちら北欧では活発に論じられているテーマです。

「目が合った時、そらしてしまうような犬は柴じゃないんです」とスウェーデン人のブリーダーが逆に私に教えてくれました。なるほど、精神の「強さ、気丈さ」は、まさに日本人が求めている柴気質です。

「その精神的強さも作業犬としてぴったりなのです」

 

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北欧では柴はショードッグとしても人気。たくさんの数の柴が参加する

柴はかつて猟犬でした(今も)。作業犬として適正があるのは、実は当たり前のことです。ところで北欧は柴のようなスピッツ系の犬種を使って狩猟をするのが盛んです。北欧のスピッツは日本で「吠えどめ」といわれる猟技を持ち、吠えながら獲物をひとところに留めておきます。その間にハンターが追いつき獲物を仕留めるというわけです。これは犬を使った非常に古い狩猟方法で、まだそれが残っている北欧は世界でも珍しい地域です。そしてこの狩猟方法は実は日本犬によって日本でも行われています(今でも日本の一部のハンターがこの技能を大切に保存しています)。

それを知っていたか否か定かではないのですが、スウェーデンの柴愛好家の中で柴を鹿の猟に使う人が数人いるとのことです。またスウェーデン柴愛好会にはハンターから柴の狩猟犬としての特性について問い合わせがたまにある、ということです。しかし残念ながら、クラブ員の誰もきちんと説明ができないとも。もしかして日本からの情報不足かもしれません。なんてもったいないことだと思います。柴が本来の能力を発揮して北欧の森を走り、猟師に獲物を仕留めさせてやる、なんて考えただけでもロマンがあります。狩猟犬としての柴も海外にもっと広がってくれればいいですよね。

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藤田 りか子(ふじた りかこ)

ドッグ・ジャーナリスト。レトリーバー二匹と自然豊かなスウェーデン・ヴェルムランド県の小さな村に在住。スウェーデン農業大学野生動物管理学科にて修士号を得る。犬の繁殖管理や福祉の先進国スウェーデンはじめ北欧の犬情報はもとより、ヨーロッパ各地の純血種の知識に詳しい。著者に『最新世界の犬種図鑑』。 現在ノーズ・ワーク(嗅覚を使うドッグスポーツ)に夢中、コンペティターでもある。