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犬の心を落ち着かせるための子守唄
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※この記事はオウンドメディア「犬のココカラ」に掲載されたガニング亜紀さんの原稿を元に、GREEN DOG & CAT ライフナビ編集部が編集してお届けしています。
犬のために流される音楽
アメリカの2500以上のアニマルシェルターで、犬たちのストレスレベルを下げ、吠え行動や興奮を軽減するために犬舎に流されている音楽があります。
作曲者はテリー・ウッドフォード氏。ウッドフォード氏の音楽は『ケーナイン・ララバイ(犬のための子守唄)』と呼ばれ、全国のシェルターのスタッフの間で絶大な評価を得ています。
ウッドフォード氏の音楽が科学的な研究の対象になったことはないのですが、現場での高い評価が広まり、アメリカ国内だけでなくイギリス、インド、オーストラリアのアニマルシェルターでも利用されています。
犬が落ち着く音楽として注目されているジャンルは、クラシック(例:バッハのゴルトベルク変奏曲、モーツァルトのアイネ・クライネ・ナハトムジークなど)、またはソフトロック(カーペンターズやジェームス・テイラーなど)です。最近ではヒトの声を含む子守唄など、リラックスを期待したものが中心です。近年ではパートナー(愛犬)と過ごす時間をより快適にするために、音楽を活用される方が増えています。
特に車やオートバイ、来客の声、雷、花火などの音が苦手、または寂しがりで留守番がストレスになる愛犬に「落ち着く音楽」は家庭でと簡単に取り入れられるストレスケアのひとつです。
犬の心をしずめるのはどんな音楽?
犬を落ち着かせるために音楽を流すという試みは過去にも複数の研究が行われ、論文が発表されています。
2002年には北アイルランド、クイーンズ大学のウェルス博士が「クラシック音楽がシェルターの犬をリラックスさせた」という発表をしています。
2012年のアメリカ、コロラド州立大学のコーガン博士の研究もこの知見が反映される発表をしています。
2016年にはイギリスのハートプリー大学、ブレイリー博士が犬は音楽よりもオーディオブックの方が落ち着きリラックスしたと発表しています。
2017年のスコットランド、グラスゴー大学のボウマン博士とスコティッシュSPCAとの共同研究では、犬はレゲエとソフトロックが流れている時に最もリラックスしたと発表されました。
これらの過去の研究で、犬のストレスレベルを下げリラックスさせた音はシンプルで、同じタイプの音を繰り返し、次に起こる音が予測可能で、一定のリズムと音量で聞こえる、という特徴を備えたものでした。
クラシック音楽ではオペラや交響曲ではなく静かな室内楽が犬に適しています。他に犬に好まれたオーディオブックやレゲエも上の条件に当てはまりますね。
ウッドフォード氏の音楽もこれらの条件を満たし、過去の研究の内容とも一致する点が多いものです。
さらに犬がオーディオブックを好むことからもわかるように、人間の声が入っている方が、リラクゼーション効果が高いので、ケーナイン・ララバイにはヴォーカルも入っています。
他とは違うケーナイン・ララバイの特徴
けれどウッドフォード氏のケーナイン・ララバイには他の音楽と決定的に違う点があります。
それは心臓が鼓動する音が使われ、そのリズムがベースになっていることです。
ウッドフォード氏は最初から犬のために音楽を作っていたわけではありませんでした。
そもそも最初に子守歌に心臓の鼓動音をつけたのは、泣いている赤ちゃんを落ち着かせるための音楽を依頼されたのがきっかけだったそうです。
一番最初は伝統的な子守唄『ロンドン橋落ちた』のメロディーをアレンジして心音を付けたのが始まりでした。
赤ちゃんのための音楽は『ハートビート・ララバイ』という名で呼ばれ、病院や一般家庭で効果があると評判になりました。
ハートビート・ララバイはいつからともなくアニマルシェルターで犬たちのために使われ始め、口コミでその効果が伝えられるようになりました。
作者であるウッドフォード氏自身は長い間そのことを知らず、コロラドにあるアニマルシェルターのスタッフから「私たちのシェルターでは13年にわたってハートビート・ララバイを犬舎で流しています。あなたの音楽を聴くと犬たちが落ち着き、吠え行動がなくなりました。」というメールを受け取り、半信半疑でそのシェルターを訪れたのだそうです。
音楽が流されると、目の前で犬たちが明らかに落ち着いていく様子を見たウッドフォード氏は驚きながらも、その経験をきっかけにハートビート・ララバイを犬のためのケーナイン・ララバイとしてパッケージ化し直しました。
音楽のCDやダウンロードはアニマルシェルターや保護団体、動物病院に無料で提供されています。
こちらの参考動画はコロラドのアニマルシェルターで毎日就寝時間の前にケーナイン・ララバイを流す時の様子です。音楽とともに犬たちが吠える声がだんだん小さくなっていくのが圧巻です。
我が家の犬にも試してみたら
Caninelullabies.comではララバイの元祖であるハートビート付きの『ロンドン橋落ちた』が1曲全部試聴できます。
さて、私もこの試聴バージョンを試してみました。
我が家の犬たちは私がPCに向かって書き物をしていると必ず邪魔をしに来ます。掃除など他の家事をしている時には離れているのですが、PCに向かっているのは犬にとっては遊んでいると見なされるようです。
そこでPCで作業をしながらケーナイン・ララバイを流すと、2匹の犬は私の足元に来たものの、いつものようにオモチャをグイグイ押し付けたり、膝を引っかいたりする事なく、静かに伏せていました。
「えーっ!?」と驚きつつ見ているとウトウトし始めたので、曲が終わったところでもう一度リピートすると2回目の後半で完全に眠ってしまいました。
「本当に犬の子守歌だわ、すごい!」とその後さらに3回ほどリピートして、その間ずっと犬を見ていたので結局書き物は全然進まなかったのですが、予想以上の効果にたいへん満足しました。
一般の家庭では、留守番の時や夜寝る時に利用するという人が多く、雷や花火が怖い犬にも効果があったと多くの人が報告しているそうです。
また、老齢期の犬は認知機能の低下や不安症状がみられることがあります。このような症状にも「落ち着く音楽」は介護の一環としても期待できます。とたえば、昼夜逆転や夜鳴きが気になるし老犬(シニア犬)に音楽やヒトの声を含む音源を流すことで、心配や呼吸がゆっくりになり、落ち着いて眠れるようになるケースもあります。音楽は副作用のないケア方法として、老犬の穏やかな時間をサポートしてくれるのではないでしょうか。
まとめ
心臓の鼓動の音をリズムのベースにした『ケーナイン・ララバイ』と呼ばれる音楽が、犬のストレスレベルを下げ、心を落ち着かせるという報告をご紹介しました。
ララバイに使われている心音は犬ではなく人間のものです。人間の心音と声が含まれるものが犬の心を落ち着かせるというのは、犬と人間の距離の近さを表しているようで胸が熱くなりますね。
過去の研究で「静かで単調なメロディー」「穏やかな人間の声」が犬の心を落ち着かせストレス行動を軽減させることが報告されていましたが、同じく犬に好まれる「一定のリズム」に心臓の音が使われているケーナイン・ララバイはリラクゼーションのための最強のツールと言えるかもしれないですね。
副作用の心配は一切ありませんので、興味のある方は試してみてくださいね。
【参考記事】
・クラシック音楽がシェルターの犬をリラックスさせた
・リホーミング犬舎での犬の行動に対するオーディオブックの影響
・犬舎にいる犬のストレスレベルに対するさまざまなジャンルの音楽の影響
・CANINE LULLABIES







