糖質
果物全般に言えることですが、バナナには糖質が豊富に含まれます。しかも吸収のスピードが速い「果糖、ブドウ糖」だけでなく、吸収に時間がかかる「でん粉」もバランスよく含まれます。でん粉は米類、イモ類に多く含まれる糖質で血糖値の上昇が緩やかなため腹持ちが良くなります。
マラソンランナーが走っている途中でバナナを食べるシーンを見かけますね。バナナの糖質が食べた直後だけでなく持続してエネルギーとなってくれる点ではマラソンには最適な栄養補給源になります。
スタッフコラム54話目
バナナと言えば、私たちにとって一番馴染みがある果物ではないでしょうか。食べやすくて栄養価も高いのでアスリートにも人気ですよね。
愛犬がバナナを喜んで食べるというお声はよく聞きますが、中にはそもそも犬にバナナを与えても良いのかと疑問に思っている飼い主さんも多いようです。私たちが食べる食品の中には犬に与えてはいけないものもあるからです。
今回は犬猫の食事の専門家であるペットフーディストの山本がバナナを愛犬に与える際に注意したいことや適量、バナナを使った犬用おやつについてもご紹介します。
バナナは愛犬にも与えられる食品であり、毒性となる成分は含みません。脂質はほとんど含まれないことから、豊富に含んでいる糖質(エネルギー源)を消化に負担をかけることなく補給できる点が大きな魅力です。 バナナが持つ栄養素にはほかにも魅力的なものがたくさんあります。
パピー(子犬)に与える場合は、目安としては生後半年を過ぎてからにしましょう。
この時期は成長するためにたくさんの栄養が必要です。しかも骨や筋肉、脳の発達をはじめとした正常な成長のためには栄養のバランスが大事なのです。
バナナは柔らかい点から未成熟な内臓を傷つける恐れはありませんが、栄養バランスに影響を与える可能性があります。またねっとりした質感が下痢または便秘の原因となることも考えられます。 しっかり栄養を摂りたい時期(小さい体)の便通トラブルは避けたいことです。また、好き嫌いや食べムラという問題をかかえやすい小型犬はきちんと主食を食べる習慣が整うまでは与えないようにしましょう。
バナナにはさまざまな栄養素が含まれますが中でも特徴的なものをピックアップ、意外にカロリーが控えめであることもご紹介します。
果物全般に言えることですが、バナナには糖質が豊富に含まれます。しかも吸収のスピードが速い「果糖、ブドウ糖」だけでなく、吸収に時間がかかる「でん粉」もバランスよく含まれます。でん粉は米類、イモ類に多く含まれる糖質で血糖値の上昇が緩やかなため腹持ちが良くなります。
マラソンランナーが走っている途中でバナナを食べるシーンを見かけますね。バナナの糖質が食べた直後だけでなく持続してエネルギーとなってくれる点ではマラソンには最適な栄養補給源になります。
レタスと同等量の食物繊維を含み、不溶性食物繊維が水溶性食物繊維の10倍多く含む点でもよく似ています。(ただし100gあたりの比較ですのでお手軽さからするとバナナは優秀ですね)
<不溶性食物繊維>
消化されず便量を増やすことで大腸を刺激するので便秘の解消に役立ちます。
<水溶性食物繊維>
水に溶けて粘性を持つため、腸内の移動を緩やかにすることで糖の吸収スピードを遅らせます。
食物繊維の主なメリット
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ビタミンはとても微量ながら体の正常な活動をサポートするために必要な栄養素で果物から豊富に摂れるもの。身近な果物であるリンゴと比較してみるとバナナの方が多く摂れるのは「ビタミンC」やビタミンB群の「ビタミンB6、葉酸」です。
バナナはリンゴの4倍のビタミンCを含みます。抗酸化成分であり細胞のイキイキ維持に役立つビタミンです。犬は体の中で作ることができるため食事から摂る必要はないものですが、病気やストレス時にはたくさん使われるので意識すると良いでしょう。
バナナはリンゴの約9倍のビタミンB6を含みます。アミノ酸(タンパク質)の代謝に関わるビタミンです。
バナナはリンゴの約13倍の葉酸を含みます。血液の生成に関わるビタミンです。
ミネラルはビタミンと同様に必要量は微量ですが体やホルモンの構成成分として、また筋肉の収縮や神経伝達に関わるなどさまざまな働きを持っています。バナナには特に筋肉や神経の働きに係わるミネラルが豊富です。これはアスリートに好まれる大きな理由です。
体内の塩分濃度(ナトリウム濃度)の調節や筋肉の収縮に関わります。
骨の構成成分であり、神経の興奮の抑制にも関わります。
炭水化物が多い食品で比べてみると、意外とカロリーは控えめです。
・ごはん100g(精白米:控えめの1膳分)
...156kcal
・さつまいも100g(蒸したもの:輪切り約4㎝幅分)
...131kcal
・バナナ100g(小さめのバナナ1本分の可食部)
...86kcal
愛犬に与える場合、バナナはおやつまたはトッピングの一部の範囲で利用できる食品と考えてください。与え方は生のバナナをスライス(5mm程度の厚さ)して体重を目安に適量を与えるようにしましょう。お口が小さいタイプやシニア犬には小さくつぶして与えてくださいね。
もちろん加熱しても食べられる食品ですからクッキーやパンケーキなど手作りおやつの材料にも使えます。
飼い主さんと一緒に食べられる犬用おやつレシピページをご紹介します。美味しいものには強い自制心が必要ですね。食べ過ぎないようにしましょう。
バナナに魅力的な栄養素がありカロリーは意外に控えめといっても、しっかりごはんを食べたい愛犬の補食(1日の必要な食事以外に摂るもの)として与えるなら、ほんの少量が良いでしょう。
愛犬に合わせて小さく切ったり潰したり食べやすい形に変えてください。 もちろんお腹の健康状態や運動量によっても適量は異なるので次の目安量を参考にして調整してくださいね。
バナナはまるごと全部与えられるものではありません。また加工品には犬にとっては有害となる添加物が入っていないか確認する必要があります。
犬用の商品以外ではバナナの加工品は与えないようにしましょう。
見た目はバナナを乾燥させただけのように見えても、原材料欄を確認すると砂糖や酸化防止剤が使われていることが多いです。
これらは私たちヒトにとっては許容範囲のものであっても愛犬の健康を害する可能性があるからです。
バナナの皮をわざわざ与えることはないと思いますが、決して与えないでくださいね。
有毒成分は含まれていませんが、犬にとってバナナの皮は硬い繊維質の塊であり、それを消化するだけの能力はありません(動物の種としての食性に適していません)
食べてしまった場合は、異常が起きないか観察する必要があります。
下痢や嘔吐で済めばまだ良いのですが、腸閉塞を起こす、お腹のなかで異常にガスが発生する(発酵が起きる)などは命に係わる症状です。様子がおかしいことに気づいた場合はできるだけ早く動物病院で診てもらってください。
バナナの与え方で説明したように、カットしたり潰して与えるようにしましょう。いくら柔らかいといっても、喉をさらさらと流れるように飲み込めるものではないからです。
健康な愛犬には問題なく与えられる食品ですが、糖質やミネラルが豊富な点から注意が必要なケースがあります。
バナナに多く含まれるカリウムは、心臓、腎臓に問題がある場合、そのステージによっては制限が必要な成分です。かかりつけの獣医師から指導されている場合はもちろんですが、まだそのステージではなくても心配だと感じる場合は与えないようにしましょう。
バナナは糖質が多いフルーツですので、たとえば糖尿病など血糖値の管理が必要な病気のほか、食事療法を行っている場合は与えられない場合があります。必ず獣医師に確認してくださいね。
食物アレルギーや花粉症などアレルギー体質の場合は用心してください。バナナがアレルゲンになる可能性はあります。アレルギーに関しては交差性といって一見無関係な素材であっても、アレルギー反応が出てしまうケースがあります。例えば、ブタクサ(キク科の植物)のアレルギーを持つ場合、リンゴやバナナにも反応するケースがあるなどです。
マグネシウムが豊富なので治療中や予防が必要な体質の場合は避けましょう。マグネシウムが尿中に多く出るとストルバイト結石症のリスクが高まります。
尿検査に異常がある場合は、バナナを与えるのは控えましょう。
私たちも愛犬も身体にはホメオスタシスといういわゆる恒常性を保つ働きを持っています。尿検査に異常があるということは尿として排泄する成分の均衡を保てないことが起きているということ。腎臓、膀胱、肝臓などに異常があるのかもしれません。
先述にてマグネシウムの尿への影響を記載しましたが、カリウムが多い点も尿検査に異常がみられる場合には控える必要が出てきます。
バナナ以外にも愛犬に与えられるフルーツはたくさんあります。与えてはいけないフルーツもあるのでなんでも与えられるわけではありません。 食卓に置いているフルーツを食べられないよう注意してくださいね。
りんご、桃、キウイ、パイナップル、マンゴー、メロン、梨、スイカ、など
これらはタンパク質分解酵素を含むので消化のサポートにもなります。手作り食では肉を柔らかくするために生のキウイやパイナップルは刻んで混ぜることもあるんですよ。
いちご、ブルーベリー、ラズベリーなど
ベリー類は野性の狼も食べることがわかっているフルーツです。獲物の肉のほかにハーブやキノコ類とともにベリー類も貴重な食糧なのだそうです。
ただし、バナナ同様に与える場合は少量を心がけてください。また皮や桃の種など与えられない部分には気をつけてくださいね。きちんと愛犬用に食べられる部分だけを器に入れて与えるようにしましょう。
種や皮の成分に犬にとって有毒となる成分が含まれるとわかっているフルーツです。
ブドウ(レーズンも含む)、さくらんぼう、いちじく、皮ごとの柑橘類、ドライフルーツ全般など
これらは主に皮や種、いちじくの場合は白い汁が犬にとって有害物質を含みます。まだ解明されていない部分もありますので、一般的に避けるよう言われているフルーツは実のみだとしても与えない方が無難です。 ただし、柑橘類の実については有機酸が胃の働きをサポートするなどメリットもあり手作り食で少量ですが利用することもあります。皮の部分の成分は濃度が高いため与えないようにします。
ドライフルーツの中には犬用に作られた商品もありますがが、それ以外は与えないようにしましょう。ドライフルーツは硬い繊維質の塊ともいえます。愛犬には消化が難しいと考えてください。
犬用商品として販売されているものは、愛犬に与えやすいように加工されており有害物質も含みません。ただし、副食(おやつ)ですからうっかりたくさん与えないようにしましょう。また個体の体質によっては合わない場合もあるので少量ずつ与えて様子をみてくださいね。
バナナは犬に与えやすい果物で栄養素からみても食べるメリットが多いです。ぜひ愛犬の食べる楽しみを増やす素材としても上手に使ってくださいね。
【参考資料】
・八訂 食品成分表2021 女子栄養大学出版部
・交差反応アレルゲン類一覧 スペクトラムラボジャパン株式会社
・【参考】ペットフーディスト養成講座テキストVol.1
フードやサプリメント選びにお困りの際は、お気軽にGREEN DOGのごはんの窓口にお問い合わせください。
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ごはんの窓口はこちらから筆者
ペットフーディスト、 アドバンス・ホリスティックケア・カウンセラー、 ペット栄養管理士、 犬の食事療法インストラクター上級師範
山本 由能(やまもと ゆの)
現在の愛犬との生活がきっかけで犬の食事や心のケアについて勉強を始めたことがご縁となりGREEN DOG & CATへ。
自身も飼い主のひとりとして愛犬との生活を楽しみ介護も経験。
日々の業務では主に犬の栄養学や健康維持に関する情報を発信しています。